丸長

行列に並んで対面を果たしたるは、目白・丸長(まるちょう)の野菜つけ麺。

以前大勝軒のことをウダウダ言ったけど、その諸々の源流にあるのが荻窪の丸長であり、目白(下落合)にあるのは、その支店。開業が昭和29年というから、そろそろ世界文化遺産に登録されても不思議じゃない。月〜土のお昼時4時間しか営業していないので、なかなか食べる機会に恵まれないが、店舗はその他の場所にも多数あるんだなぁ。


つけ麺好きというのは、もちろん個人的な味の嗜好が大きいが、しかしそれだけではなく、思い出に起因する部分もあるのかもしれない、と思う。
つけ麺といえば、僕がまだ幼かった頃、近所にあった店『つけ麺大王』に、夜中、何度か母親に連れられて行った思い出が一番印象深い。夜中とはいえ、深夜というほど遅い時間ではなかったと思うが、因数分解も不得手な4、5歳の頃なので、そんな時間に起きて、しかも外を出歩いているというのが、何とも特別な出来事のような気がした。
母に「お父さんには内緒だからね」と言われて、翌日わざわざ父に「昨日夜お母さんとつけ麺食べに行ってないよ」と言っていた。我ながら愛すべき子供じゃないか。末は博士にも大臣にもならないけど。
すでに子供が立派に成人しているような年代のおっさん連中なんかとも酒を酌み交わすようになり、「親は子供にたくさん思い出を残そうと思って、あちこち連れて行ったりするけど、子供は覚えてないんだよなぁ、そういうの」なんていう話を聞いたりするようにもなった。事実大半は忘れてしまっているけど、断片的な記憶は結構残っている。家族で車に乗ってどこかへ出かける途中、車酔いで気分が悪くなり、後部座席で横になっている場面とか。出かけた先での楽しい出来事は、まったく残っていない。何だか、こういう記憶の積み重ねが、その後の人生で『楽観的』か『悲観的』かという人間性を決定しているような気がしないでもない。