050228 カネヤン・ア・ゴーゴーscene3

briki2005-03-30


  登場人物
 ジョー(かねやんさん)クローディア(かねやんさんの奥さん)ロミオ(ヤツ君)
 チャーリィ(茶吉さん)添加物(ガス電池)ポマード(整髪油)



チャーリィに言われた通り、カウンターからそっと頭を出して覗いてみた。オレは目を見張った。
ジョーは何百何千という弾丸の嵐を華麗にかわしていた。予想通り例のマトリックス避けで。
「これで分かったろ?アイツが『ユーズド・ザ・ジョー』って呼ばれるワケが」
正直オレにはまったく分からなかったが、「へ、へい!」と答えた。さっき頭を出した時に2発弾丸を追加されたからだ。少し気が遠のいてきた感じがしないでもない。


しかし避けているだけじゃ勝てるわけがねぇ。どうするってんだ?だがこのチャーリィやクローディアの余裕っぷりはどうだ。ロミオにいたってはもう昼寝に入っていやがる。
カウンターの横から覗いてみると、ジョーはマトリックス避けの体勢のままで弾丸の嵐を避け続けていた。敵がマシンガンの銃口をちょっとでも下に向ければ、全部命中してしまうという危険な状況だったが、頭脳戦はどうやらジョーが制したみてぇだ。
しかもジョーは、そのままの姿勢を保ったまま前進し始めた。オレにはリンボーダンスをしているように見えた。バーの代わりの障害になっているのは、この場合弾丸だが。
そのままの姿勢で敵に近付いていくジョー。オレにはいまやっと分かった。チャーリィたちの余裕のわけが。オレは今度は1発の銃弾しか喰らわずにカウンターに引っ込んだ。


そろそろヤツらのところまでたどり着く頃だろう。あとはジョーに任せておくか・・・。同じことを考えたんであろうチャーリィが、ジョーを確認しようとして「あ」っと声を出した。
見てみると、ジョーはそのリンボーダンスの姿勢のままで、敵の横を通り過ぎていくところだった。ポマードは真横を通り過ぎていくジョーを、なにか不思議なモノを見ちゃった、って感じの目で見送った。
「しまった。アイツにはいま、前が全然見えてねぇ」チャーリィが額に手を当てて言った。
「アレって実戦で使ったことなかったから、想定外だったね・・・」クローディアもため息をついた。
そう言ってる間にも、ジョーは順調に店から離れていった。あばよジョー。


「よし、こうなったらオレがやるか」チャーリィはそう言うと、例のキューを分解し始めた。何するってんだ?それがもしや武器に・・・そうか!あの「マ」ってのはマシンガンの「マ」だったのか!さすがだぜチャーリィ。ビリヤードのキューがマシンガンになるなんて誰も想像出来やしねぇだろう。
1分ほど経過すると、チャーリィの手にはヌンチャクが握られていた。


「早まるな、若者よ」ロミオだった。普段聞かれないそんなロミオのセリフに、チャーリィも面喰らったようだ。
「いや俺も若いが、お前さんの方がう〜んと若いと思うぜ。まあここは俺に任せぐふっ」ロミオの拳がチャーリィのみぞおちに決まった。チャーリィは気を失う。
「ま、まさか・・・まさか・・・」クローディアが驚いている。ロミオの体を、無数の金色の糸のようなモノが覆い始めている。なんだ?一体何が起こっている?
「私は全然信じちゃいなかったんだ。預言者は、あの子が『救世主だ』って言ってたけど、私は・・・」
「ノープロブレム、マイマミィ」ロミオはクローディアに優しくそう言うと、次にオレの方を向いてこう言った。「『マ』ってのはね・・・」
言い終えたロミオは、カウンターの上に優雅な跳躍で音もなく降り立った。
そうか、そういうことだったのか。オレはいま確信していた。ロミオは完全に救世主なのだと。


「お、自分から出て来やがったなロミオ坊や」ポマードが銃撃を止めさせる。
「イイ子だ。さあこっちへおいで。ほら」ポマードが手招きをする。
「お前にこの店は渡せない。なぜならここは『カネヤン・ア・ゴーゴー』だからで、お前はポマードだからだ」
当たり前のことだというような口調でロミオが言い放った。
「・・・ケッ!甘く見てやってりゃ調子に乗りやがって・・・構わねぇ、やっちまえ!」激怒したポマードの声が合図となり、また無数の弾丸が発射され始めた。
「無駄だよ」ロミオは目を閉じ、右手をそっと前に差し出し



  (ノルマ達成につき)fin