オフヶレポ・7

 〜人格とうさうさ脳の過去 そしてちょの現在〜


・・・武器がきなこ棒・・・さすがにこれはヤバいかも、とみんなの心が一つになった、かと思いきや、うさうさ脳さんだけは、きなこ棒を振り下ろし、一振りする度に「うんうん」などと言いながら、振り具合や握る感触を確かめていました。きなこがバサバサ飛んでただの棒になるのも気にせずに、何度も繰り返しています。
「・・・懐かしいなぁ、コレ」
その様子を、これまた懐かしそうに眺めていた人格さん。
「あの作戦から、もうじき3年か・・・腕の方は衰えちゃいないだろうね」。
「当然じゃきに」
うさうさ脳さんの口から、明らかに西方の方言が飛び出しましたが、誰もそこには触れませんでした。
「じゃあちょいと・・・確かめさせてもらおうかね!」
そう言うやいなや、人格さんが素早いステップでうさうさ脳さん目掛けて飛びかかりました。
「お、そうこなくちゃじゃけん」
うさうさ脳さんも身構え、応戦の構えをとります。方言は多分ノリです。
「お!久々にあの2人の手合わせが見られるのか!・・・お前ら、その目によぅく焼き付けておけよ」
事情を知っているらしいでるでるさんが、目を輝かせながらそう言いました。


 『キン!キン!キン!キン!キン!キン?キン!キン!キン!』


人格さんとうさうさ脳さんの、凄まじい攻防が始まりました。お互いの武器であるキセルときなこ棒が、あまりの早さでまったく目に見えません。ハイレベルな戦いに、一同は完全に呆気にとられてしまいました。
ふと何かに気付いた40秒さん。「・・・ん?あれ?」「なんでぇ、どうした?」良いところを邪魔され、ちょっとぶっきらぼうに答えるでるでるさん。
「2人が動かしてるのって、右手ですよね」「それがどうした?」パンティさんも気付いて、あとを続けました。「あ、キセルときなこ棒、左手にぶらーんと持ってますね・・・」
2人の武器が見えないのは当然でした。だって持っていなかったんだもん。キンキン鳴ってたのも、2人が口で言い合ってるだけでした。そういや疑問形もあった。
「だから、それがどうしたんだよ?」でるでるさんの口調に苛立ちの色が濃くなってきたので、パンティさんも40秒さんも「あ、いえ、別に・・・」と、それ以上は口を挟みませんでした。もちろん、他の誰も。


そんな2人の意味不明な手合わせは、30分ほども続いたでしょうか。ピタッ、と動きが止まりました。
「・・・ふぅ。まあ思っていたほど悪くはないね」
「何言ってんでごわすか。いま俺に、35回殺されていたでごわすよ」
「ふん、まあアンタが36回殺されてなければ、の話だけどねぇ」
「じゃあ37回殺したでやんす!」
「じゃあ38回だったね」
「・・・39回!」「40回!」「41回!」「・・・!」「・・・!」


今度はそんな口喧嘩が始まりましたが、気付くと、ちょさんの姿が見当たりません。「あれ?ちょさんは?」
辺りを見回してみると、後ろから何やら黒い影が近付いてきました。とてもゆっくり、ずり・・・ずり・・・と、こちらに近付いてきます。やがて近くまで来て、街頭の明かりで照らされると、そこには・・・ぎゃーーー!!
全身をカブト虫に覆われた男・・・いや男か女かも分からないけど、なんかそんなのが立ってました。
「ぎゃーーー!・・・って、おや?もしかして、ちょさん?」


プリン82個という超重装備となったちょさんは、しかし同時に、移動速度が極端に遅くなってしまいました。82個のプリンタワーを崩さないよう気を遣って動かなくてはいけない上に、当然、集まってくるカブト虫(含む密偵&クワガタ)の数も82倍になっていたからです。たかがカブト虫とはいえ、82倍という数にもなると、その重量に押し潰されないようにするだけでも大変。もはや外見も、ちょさんというよりカブト虫の集合体という状態です。わさわさ蠢いていて、しかも黒光りしています。結構グロテスクなので、このオフレポがテレビドラマ化された時には全身モザイク必至でしょう。


「カブト・・・じゃない。ちょさんは、そのままじゃかなり動きにくそうですね」
と貉さんが話しかけましたが、ブゥーンブゥーンという羽音で、返事がまったく聞こえません。
「うーん・・・オーライ!ここはミーがなんとかしよう!」
切れ者外人さんが、ちょさんの近くで、何やらごそごそし始めました。
数分後。なんと82倍ものカブト虫たちのツノと、ちょさんの体がひもで結び付けられていました。
「フゥ・・・さぁ、これでどうデスカ?」
その言葉が合図であったかのように、カブト虫たちが一斉に羽を広げ飛び始めました。するとちょさんが、少しずつ空中に浮き始めます。
「おぉ?と、飛ぶの!?」
これにはみんな驚きました。風船ならまだしも、カブト虫の大群で空を飛ぶだなんて、人類史上初の快挙だったはずです。そんな一同の仰天をよそに、ちょさんはどんどん高く浮き上がっていきます。
「あ!マズイかも!」
このままでは、ちょさんが夜空の星になってしまうと思ったアンテナさん(身長5メートル半)が、背伸びしてちょさんの足をむんずと捕まえました。この時点で、ちょさんはすでに空中7メートル近くの地点でふわふわ。その様子は、まるで黒い風船を手に持っているように見えます。しかし、どこまで飛んでいくのか、少しワクワクしながら見つめていたみんなは、心の中で舌打ちをしていたようです。


「・・・あ!」と、パンティさんがここで何かを思い出しました。

  その者、黒き衣をまといて金色の野に降りたつべし。
  失われた大地との絆を結び、ついに人々を清浄の地にみちびかん・・・

「何それ?」と問うたは貉さん。
「自宅の電話番号の語呂合わせです」とパンティさん。ふーん長いねー、と全員。


「2998回!」「2999回!」「3000回!」「30000回!」「3・・・え?あ、ズリーズリー!自分だけ10倍とかすんなよー」「べー!やったもん勝ちなんだよ!」「卑怯クマー!」ハハハ、店員の口癖がうつってら。
まだそんなことを続けていた人格さんとうさうさ脳さんに、アンテナさんが『ちょバルーン』を見せました。
「ん?・・・なんだいこの黒いのは?・・・お、ちょか。そうか。カブトアーマーをまとったんだね」
「お、じゃあ防御力が今までの82倍くらいに達してるはずだなぁ」
そこもきっちり82倍なのか。でも元はいくつ?元が0なら82倍しても0のままじゃない?
そんなちっぽけな疑問にはお構いなしで、よし!これで準備万端だ。野郎ども、作戦の決行は明日だよ!おー!
というわけで、新宿の夜はこれにて解散の運びとなりました。



長いわりに、内容ほとんど進んでない。
任せた。