オフヶレポ・5

「Let me see…じゃあとりあえず、明日10時半新宿駅東口集合で。それから助けに行こう」
と、ミッションを取り仕切る外人さんと言った刹那、
「おや?おかしな話だねぇ・・・確かこのあとの予定では、『カラオケ屋』に行くはずじゃなかったかい?」
と、人格さんが言いました。
『カラオケ屋』というのは、もちろん隠語で、正確には『カラクリ屋』。武器商人が経営する武器ショップのことです。
「まさか敵の組織の懐に潜り込もうって時に、手ぶらで行こうってわけじゃないだろうね?」
「あ・・・そ、そうでしター。Ha,Hahahaー!ソーリーソーリー!ベリーソーリーね!」
外人さんはどっちのキャラで行くのか、まだ決めかねていたようですが、それを抜きにしても、その狼狽振りは大層なものでした。
「実は、ここに来るまでに、ちょっとした情報を入手してねぇ・・・」
人格さんは、あくまで優雅に、しかし重厚な威圧感を漂わせながら、紫煙を吐きました。
「・・・この中に、どうやらスパイがいるらしいんだよ。外人、心当たりはないかい?」
「あ!?・・・そ、そんなバカな・・・それは人格カンジョークね!ハハハ・・・ハハ・・・」
外人さんは、明らかに動揺していました。漫画のように『ぎくっ!』という擬音文字が飛び出ました。
しかしよく見ると『ぎくっ!』の文字は、外人さんだけではなく、他のみんなにも出てました。おや?僕も出してます。
「おやまぁ、なんてこった。私以外、全員スパイだったのかい」
あー、そうだったんだー。へぇー、奇遇だねー。キミはいつからスパイやってんの?ボクは半年くらい前かなー。お、ほぼ同期じゃん!あ、坂田さん知ってる?え、それ誰?古株のスパイなんだけどさー。みたいな会話がされ始めました。やんややんや。


パシーン!
キセルで手を叩く乾いた音が響きました。
「アンタら・・・覚悟は出来てるんだろうね・・・」
浮かれ気分はそこまででした。人格さんのひと睨みで、全員が直立不動になりました。
「す、すんませんしたー!!」
人格さんの戦闘力は、圧倒的にずば抜けています。たとえ9人でかかっていたとしても、人格さんには勝てなかったでしょう。吐き出す紫煙だけで全員ノックアウトされてしまっていたはずです。


アルタ前で、1人1人が「もうスパイなんてしないなんて言わないよ絶対〜♪」と、大声でマッキーのモノマネをさせられ、スパイをやめることを宣言させられました。この替え歌だとスパイやめないってことになるのかもしれませんが、そんな細かいことはどうでも良かったようです。


「よし、じゃあこれから『カラオケ屋』に行くよ」
「イェッサー!」


人格さんを先頭に、僕たちはちょっとした軍隊並みの規律の良さで行進をしながら、カラオケ屋に向かいました。


 続く