チャリーズメモリー・前編

自転車に乗ったOLさんが、奇妙なすっ転び方をするのを見ました。
真横に倒れていくのに、手も足も付かずに身体丸ごとコンクリにドーン!
何が原因でバランスを崩したのか分かりませんが、普通ああいう場合って、人間に備わっている自己保身のための反射機能の働きで、手なり足なりが先に付くような気がします。それが自転車に乗ったまま、手はハンドル、足はペダルに固定したまま地面にドーン!不思議です。
いやもしかしたら、彼女は柔道経験者、しかもかなりの強者で、素人目には分からない高度な受け身のテクニックで自分を守っていたのかもしれません。そういえば全然痛がってませんでした。ひょっとしてアレ?路上パフォーマンス?


それを見て、僕も似たような経験があったことを思い出しました。
確か僕が小学校2年生の頃のこと。当時の僕は、まだ自転車に乗ることが出来ませんで、日曜日に九段下は皇居の近くに出かけていました。
日曜になると皇居の周囲(1周約5キロ)が歩行者天国(なんか昭和を感じさせる言葉)になりまして、現在でもあるのか分かりませんが、当時はそこでサイクリングが出来るように、自転車が貸し出されていました。
これなら買わなくても自転車に乗る練習が出来ます。ルン。


で、苦労したのかしなかったのか、そこのトコはよく覚えていないのですが、とにかく自転車に乗れるようになりましてん。えへへ。
そこで調子に乗ったのか、周りの友達が自慢げにやっていた「手離し」を、ちょっとやってみようと思ったんです。簡単そうに見えたんですけど、自転車に乗れるようになってすぐってのは、いま考えると無謀ですね。
パッと両手を離してみたら、あらあら瞬く間にハンドルが変な動きし始めたじゃない。おかしいわね・・・え?あれ?うそ?ドーン!


その、バランスを失ってから地面に激突するまでのあいだ、僕も先の「自己保身のための反射機能」のスイッチが入ったはずです。頭の中はアレレレレ?ウワワワワ!ってな感じでしたが、むしろそういう時こそ働くはず。
しかし、しかしですよ。なんて言うのかなぁ・・・その時に頭の中で「そのまま!」っていう声が聞こえた気がしました。うん、なんとなくですけどね。神様?
その声に従ってなのか、僕は顔面の右半分で受け身をとります。もはや受け身と呼んでいいものか分かりません。
当然の結果として、顔面が地面にグシャ!っと激突しました。そして慣性の法則の存在によりそれだけでは終わらず、顔面右半分をコンクリートガリガリガリガリッ!
この出来事以来、僕は神様を信じなくなりました。


 後編に続く