座椅子を贈る

新年の親孝行で、親にプレゼントするための座椅子を買いに行く。
どうせなら背もたれが大きい方がイイだろうと思い、目に付いた角度調節機能付きのデカめな座椅子を購入することに決める。
「アレを下さい、あの黒くてデカいのを下さい」と指差しビシッと店員さんに注文したあとで、アレ?あんな大きな座椅子、どうやって持って帰んの?配送料は?とか思っていたら、レジのお姉さんが倒れて板状になっている座椅子を器用にクルクルとヒモで縛って、「ありがとうございました〜」と当然のように渡されたから、その自然な流れを崩さないように「あ、はい」と紳士的な対応を心掛けたら、板状の座椅子を持ち帰ることになった。長さは120センチくらいある。
ただ持って帰るだけなら、頭のイイ僕は電車やバスを使うところだけれど、そういえば2駅分の距離を、今日は自転車で来ている。仕方がないので自転車に乗りながら、座椅子を持ち帰るためのベストなセッティングを模索してみる。片手で座椅子を持ち、もう片方の手でハンドルを握ってみたりしたものの、やはり座椅子は重い。そもそも座椅子を持ち運ぶこと自体が初めてなので、どう持てば負担が少ないのかも分からない。これでは家に着く前に僕の右腕がギブアップすることは目に見えている。座椅子を持ち続けた結果、ギターのストロークすら出来なくなりましたー、という話は、ギリギリ美談になるの?ならないの?
結局頭がイイ僕は、自転車のカゴを頼ることにした。とはいえ、すんなりカゴに入るような大きさではないし、かといって座椅子を寝かせた状態で置くと、重さでずり落ちてしまう。縦にすると、視界がほぼ座椅子。何という厄介モノ。そこで横にしてハンドルに立てかけるようなセッティングにしてみた。視界の下半分は座椅子だけど、これがどうやらベストっぽい。ものすごい寒風の抵抗を受けながら、家路に着いた。


とても疲労したので、親が座るより先に、僕が座椅子に座っている。
もし僕がサンタクロースだったら、欲しいプレゼントが『座椅子』という子供の家には絶対行かない。