自動生成日記

そのローカル線のドアの横には、まるでエレベーターのように開閉ボタンが付いており、そのボタンを押さなければドアは開かない。
なんで?と聞かれても、そういう仕様だからとしか答えられない。
舞台はそんなローカル線の先頭車両。


一人目の登場人物は男子高校生。
見た目からは、一般的に不良とかヤンキーと呼ばれる分類に属していると推測されるが、なんとも微笑ましいほど垢抜けていない。
この男子高校生、電車内に1つしかないトイレの前に、まるで門番であるかのように床にじかに座り込み、ケータイをカチカチと操作している。
甚だ迷惑なことではあるが、「不良」としてはまさに正しい行動をしていると言える。


二人目の登場人物は老婆。
門番が配置されたトイレの近くの優先席に座っているこの老婆、動作の緩やかさも腰の曲がり具合も、申し分なく老婆であることを体現している。その横に置かれた風呂敷包みは、不釣合いなほど大きい。


電車はこの老婆が降りたい駅に着いたらしく、老婆はゆっくりと背中に風呂敷包みを背負うと、ドア横のボタンを押した。
しかし、老婆の指の力では、ボタンが「押された」ということが認識されなかったのか、はたまたボタンの故障なのか、ドアは開かなかった。
老婆は不思議そうな顔をしながらも、繰り返しボタンを押している。
やがて周囲にいた乗客たちもその事態に気づき、「あらあらあら」などと言いながら、老婆を取り囲み、加勢をしてボタンを押すが、電車は動き始めてしまった。


それを横目に見ていた男子高校生が、やおら立ち上がると、トイレの門番の役割を放棄して運転手の方へ駆け寄り、隔てているガラスをドンドンと叩くと、
「まだ降りる人、いるっスよ」
と言った。


運転手はもう無理だというように手を振っただけで、事態は好転しなかったが、電車はすでに駅のホームを離れていたので仕方がない。
男子高校生は、あっさり諦めると再びトイレの方へと引き返した。
その途中、老婆たちと取り囲んでいた乗客たちが、口々にこの男子高校生に「ありがとうね」とお礼を言う。
男子高校生は頭をかきながら、「いいっス、いいっス」と照れくさそうに言い、再びトイレの門番となった。
うーん、やるじゃないか、学生。


男子高校生は次が降りる駅だったらしく、駅に着いてすぐにドア横のボタンを押した。ドアは正常に開いた。
引き返す羽目になった老婆と、数人の乗客たちが共にその駅で降りた。
窓の向こうで、きっと再度お礼を言われたのだろう。男子高校生が頭をかきながら老婆のほうに向かって何か言っている様子が目に入った。
きっとまた「いいっス、いいっス」と言っているに違いない。



と、場所が場所ならばここで清々しく終わるところだが、ここは「はた織り鶴の一撃」。これだけでは終わらない。


まず優先席付近ではケータイの使用は禁止と書かれているにもかかわらず、ケータイを使用していたことで−4。
次に人の迷惑を考えず、トイレのドアの前に座っていたことで−5。
トイレがある分、通路が狭くなっている箇所であったので、トイレを使わない人にも通行の邪魔になっていたことで−3。
そしてその垢抜けなさにオマケの−1。
対して、老婆の力になろうと運転手の元へ走ったという唯一の善行を+8とする。
合計は−5。


したがってキミは−5なのだよ。このアホゥめ。


 (ガス電池 −80)